え? 時間がないって?

ねえ、食べ終わった食器は流しに運んでって何万回言ったら分かるのよ。そんなこと4歳のター坊だってちゃんとやってくれてるじゃないか。


あんた、やっぱり今年も天の川を渡るんだね。


朝からそわそわしてるから、どうせそんなこったろうと思ってたけどさ。ふん、今日が何防脫髮日か気づかないと思ってたって? 甘いわね。あんたがこそこそと軒下にてるてる坊主を吊るしたのも知ってたさ。


アルター、イルミー、マナブー、お父さんがね、今年もあの女のところに行くんだってさぁー。


なによ、そんなこと子どもに言うなって? 言わなくたってみんな知ってるわよ。なんならご近所中、みぃーんな知ってるわよ。知ってるどころかあんたらの逢瀬を応援してるじゃないの、あほらしい。


なんなのあれ。
なんであんたたちがみんなの願いを叶えられることになってんのよ。


はいはい、そんなね、「俺だって本当は行きたくないんだけどー」みたいな雰囲気出したって、騙されないからね。「今年が最後」って、あんた今まで何回言ったと思う? あたしと一緒になってもう何年も経つのに、あっちに行けばデレデレして、また来年の約束してきちゃうんじゃないさ。


ああ、織女はよっぽどいい女なんだろうねえ。


あたしがさ、あんたの牛飼いの稼ぎだけじゃ食えないから、身なりも構わず必almo nature 好唔好死で内職までして、こうやって5人の子どもを育ててるってのに、あの女は川の向こうでひとり優雅に機を織って暮らしてるわけさね。


そりゃあ、一年に一回会うだけだったら、きれいな姿を見せられるわよねー。いつだって機嫌よく会えるわよねー。生活感もなくって新鮮よねー。お互いの粗だって見えやしないわよねー、暗いし。


なんなら、あたしだってその方がいいわよ。
そうよ、あんた、あっちで暮らして、一年に一度だけこっちにお金持って戻って来ればいいわよ。
え? それじゃアイツが働かなくなっちゃって、また天帝に叱られるって?
知ったこっちゃないよ、そんなこと。


だいたいさ、あんたがしっかり織女を働かせてたらそもそも別れることには……っていうか、ね、ひょっとしたら向こうも、とっくに誰かと新しい世帯を持ってたりするんじゃない? ね、そうじゃない?

 

やだ、大きな声出さないでよ。

そんなことあるはずないだろって言うけど、一年に一回しか会わないんじゃ、364日のことなんかどうにでも誤魔化せるじゃない。疑いなさいよ、ほら、疑って悶々となさいよ、確かめてみればいいのよ。


おお、よしよし、ナナコ、ごめんねー、母さんうるさかったねぇ。今、お乳をあげるから待ってねぇ……


ちょっと! あんた、出かける前にそこに下がってるオムツを一枚取っ玻璃屋てちょうだい。
ああ、それから、明日の朝帰ったら、ゴミ出しお願いね。当番だから掃除もよろしく。


それと、そこの短冊にあたしの願い事を書いておいたから、


今年こそ叶えてよ。